2026.1.25
実績を語るほど人が離れる?|経営者のXは「思考」を見せると強くなる
経営者がXで発信するとき、多くの人が「実績」を語ろうとします。売上、導入事例、受賞歴、成長率など、成果を示すことで信頼を得られると考えるのは自然な発想です。
しかし実際には、実績を前面に出した投稿ほど、フォロワーが伸びにくく、共感も生まれにくい傾向があります。「すごい」と思われる一方で、距離を感じさせてしまい、継続的に投稿を追いたい存在にはなりにくいのです。
SNSで人が惹かれるのは、結果そのものよりも、「そこに至るまでに何を考え、どう判断したのか」という思考のプロセスです。迷い、試行錯誤、失敗、学びといった過程こそが、人の共感と信頼を生みます。
この記事では、なぜ実績アピールが逆効果になりやすいのかを整理した上で、経営者がXで見せるべき「思考プロセス」の切り取り方と、信頼につながる発信の考え方を解説します。
特に、採用やブランディング、顧客との関係構築といった経営課題を同時に考えなければならない成長フェーズの企業にとって、経営者の発信は個人のSNS活用にとどまらず、企業の信頼形成にも直結する取り組みになりつつあります。そのため、何を語るかだけでなく、どのような思考をどう見せていくかが、企業活動全体にも影響を与える要素になっています。
目次
第1章|なぜ「実績」を語るほど人は離れていくのか

経営者がXで発信するとき、つい実績を前面に出してしまうのは自然なことです。売上の成長、導入企業数、表彰歴、メディア掲載など、数字や肩書きは分かりやすく「成果」を伝えられます。しかし、SNS上では、こうした実績アピールが必ずしもプラスに働くとは限りません。むしろ、実績を語るほどフォロワーとの距離が広がってしまうケースも少なくありません。
この章では、なぜ実績発信が逆効果になりやすいのか、その構造を整理します。
実績アピールが生む心理的な距離
実績は、本来は信頼を高める材料になるはずです。しかし、SNSという文脈では、実績が「比較の材料」として受け取られやすくなります。
フォロワーは、投稿を見ながら無意識に自分と発信者を比較します。「自分はそこまで成果を出せていない」「同じことはできそうにない」と感じた瞬間、共感よりも距離感が生まれてしまいます。
特に、成果だけが切り取られた投稿が続くと、「すごい人ではあるが、自分とは世界が違う人」という認識が強まり、心理的な壁が生まれやすくなります。
比較・劣等感・警戒心が生まれる構造
実績投稿が続くと、フォロワー側には比較だけでなく、劣等感や警戒心も生まれやすくなります。
「この人は成功者だから、自分には関係ない話だ」と距離を置かれるケースもあれば、「この投稿の先には何か売り込みがあるのではないか」と警戒されるケースもあります。
実績が強調されるほど、発信の意図が「アピール」や「営業」として受け取られやすくなり、純粋な学びや共感として受け取ってもらいにくくなります。
SNS文脈での“マウンティング化”問題
本人にそのつもりがなくても、実績発信はSNS上ではマウンティングのように見えてしまうことがあります。数字や成果の強調は、相対比較を生みやすく、フォロワーにストレスを与える場合があります。
SNSは日常的に眺めるメディアであり、過度な成功アピールは、ユーザー体験としても疲れやすい要素になります。その結果、ミュートやフォロー解除につながることもあります。
実績は重要な情報ではありますが、SNSでは扱い方を誤ると、信頼よりも距離を生んでしまうリスクがあることを理解しておく必要があります。
第2章|共感されるのは結果ではなく「考え方」である

実績が評価されにくい一方で、SNSでは「考え方」や「思考プロセス」に対して共感が集まりやすい傾向があります。人は、完成された結果よりも、そこに至るまでの背景や判断の流れにこそ、学びや親近感を感じます。この章では、なぜ結果よりも考え方が重視されるのかを整理します。
人はストーリーに共感する
人が心を動かされるのは、単なる情報や数字ではなく、そこにあるストーリーです。どんな課題に直面し、どんな選択肢で悩み、どのように決断したのかという過程には、感情や葛藤が含まれています。
フォロワーは、自分自身の経験や悩みと重ね合わせながら読みます。そのため、ストーリー性のある発信ほど、記憶に残りやすく、共感されやすくなります。
結果だけを伝える投稿では、このストーリー部分が省略されてしまい、読み手が感情移入する余地が生まれません。
判断プロセスが学びになる理由
経営者の発信が価値を持つのは、「正解を教える」ことではなく、「考え方のヒントを与える」ことにあります。なぜその判断に至ったのか、どんなリスクをどう評価したのか、何を優先したのかといったプロセスは、フォロワーにとって実践的な学びになります。
同じ状況が再現されることはほとんどありませんが、判断の軸や思考のフレームは応用できます。フォロワーは、そうした再利用可能な思考を求めています。
情報より“思考”が価値になる時代
情報そのものは、インターネット上にあふれています。検索すれば多くの正解が見つかる時代において、単なる情報提供は差別化になりにくくなっています。
一方で、「その人がどう考えるか」という視点は、代替できません。経営者の思考、判断、優先順位の付け方は、フォロワーにとって貴重な参考材料になります。
SNSでは、情報の正確さよりも、「この人の考え方を知りたい」と思ってもらえるかどうかが、フォローやエンゲージメントを左右します。
第3章|経営者が見せるべき「思考プロセス」とは何か

「思考を見せることが大切」と言われても、何をどこまで発信すればいいのか分からないという声は多くあります。ここで重要なのは、専門的なノウハウや完成された結論を語ることではありません。日々の意思決定の中にある“考え方の断片”を、フォロワーが理解できる形で切り取ることです。この章では、経営者が見せるべき思考プロセスの具体像を整理します。
意思決定の背景を言語化する
経営者の思考プロセスで最も価値があるのは、「なぜその判断をしたのか」という背景です。結果だけを伝えてしまうと、フォロワーは判断の再現性を学ぶことができません。
例えば、新しい施策に投資した理由、採用基準を変えた理由、価格を見直した理由など、判断に至るまでに考えた選択肢やリスク、優先順位を簡単に言語化するだけでも、十分に価値のある発信になります。
完璧に整理された文章である必要はなく、「どんな点で迷ったのか」「最終的に何を重視したのか」を伝えることが重要です。
迷い・葛藤をあえて共有する
経営者の発信は、どうしても成功や自信に満ちた内容に偏りがちです。しかし、実際の経営は、常に迷いと葛藤の連続です。そこをあえて共有することで、フォロワーとの距離は縮まりやすくなります。
「この判断で本当に良かったのか」「別の選択肢もあったのではないか」といった正直な気持ちは、多くのフォロワーが共感できるポイントです。完璧な経営者像よりも、考え続ける姿勢の方が、信頼につながりやすくなります。
数字と感情の両方を伝える
思考プロセスを伝える際には、数字だけでなく、そのときの感情や違和感も含めると、よりリアリティが増します。
「数字的には合理的だったが、現場の反応が気になった」「利益は出たが、チームの負担が大きかった」など、定量と定性の両面を伝えることで、判断の複雑さが伝わります。
フォロワーは、単純な成功談よりも、現実的な葛藤が含まれた判断の方に学びを感じやすくなります。
第4章|失敗・迷い・判断をどう切り取れば共感になるか

思考プロセスを発信する際に、多くの経営者が悩むのが「どこまで書けばいいのか」「失敗を出して大丈夫なのか」という点です。切り取り方を間違えると、単なる愚痴や自己正当化に見えてしまうこともあります。この章では、失敗や迷い、判断を共感につなげるための整理方法を解説します。
失敗談は「事実→学び」の構造で整理する
失敗を共有するときに重要なのは、感情だけで終わらせないことです。まず何が起きたのかという事実を簡潔に伝え、そのうえで「そこから何を学んだのか」を言語化します。
例えば、「新しい施策を急ぎすぎて現場に負担をかけてしまった」という事実があれば、「スピードよりも現場の納得感を優先すべきだった」という学びにつなげます。この構造を意識するだけで、失敗談は読み手にとって再現性のある学びに変わります。
迷いは「選択肢と判断基準」をセットで示す
迷いを共有する際は、「何に迷ったのか」だけでなく、「どんな選択肢があり、何を基準に決めたのか」を伝えることが重要です。
単に悩んだ事実を伝えるだけでは、読み手は具体的な学びを得られません。判断基準が見えることで、フォロワーは自分の意思決定にも応用できるようになります。
判断は「再現できる視点」に落とし込む
経営者の判断は、規模や業種が異なると、そのまま真似できない場合も多くあります。そのため、「自社だからできた話」で終わらせず、考え方の部分を抽象化することが大切です。
例えば、「数字だけでなく現場の声を重視した」「短期利益よりも長期的な信頼を優先した」といった視点に落とし込むことで、多くのフォロワーが参考にできる学びになります。
関連記事→採用Xで人が離れる企業の共通点|炎上・不信・応募ゼロの典型パターン
第5章|「思考発信」が信頼資産になる理由

ここまで、実績アピールが逆効果になりやすい理由、共感されるのは結果ではなく考え方であること、思考プロセスの見せ方、失敗や判断の切り取り方について整理してきました。最後に、こうした「思考発信」が、なぜ長期的な信頼資産として機能するのかをまとめます。
信頼は短期間では作れない
フォロワーとの信頼関係は、一度の投稿や一時的な反応によって生まれるものではありません。日々の発信の積み重ねによって、少しずつ形成されていきます。
思考プロセスを継続的に共有していると、フォロワーの中に「この人はこういう判断をする」「この人はこういう価値観を大切にしている」という認識が蓄積されます。この蓄積こそが、信頼の土台になります。
売らなくても選ばれる状態が生まれる
信頼が積み上がると、直接的な売り込みをしなくても、自然と相談や紹介が生まれるようになります。フォロワーは、信頼できる人に対してこそ、自分の課題を相談したいと感じるからです。
短期的な成果を求めて実績アピールに走るよりも、思考を共有し続ける方が、長期的には安定した成果につながります。
発信が「資産」として蓄積される
思考発信は、投稿が積み重なるほど、その人の価値観や判断軸がアーカイブされていきます。過去の投稿が蓄積されることで、新しくフォローした人にも、その人の考え方が伝わりやすくなります。
SNSが単なるフロー型の発信ではなく、信頼のストック型メディアとして機能するようになります。
経営者の思考発信は企業の信頼設計にも影響する
経営者の思考プロセスが継続的に発信されることで、その企業がどんな価値観で経営されているのかが、社外からも見えやすくなります。これは採用活動においては企業文化の理解につながり、顧客にとっては取引先としての安心材料にもなります。
広告や広報施策だけでは伝えきれない企業の思想や判断基準が、経営者の言葉を通じて可視化されることで、企業全体の信頼形成にも影響していきます。思考発信は、個人ブランディングであると同時に、企業ブランドを支える要素にもなっているのです。
まとめ
経営者がXで語るべきなのは、実績や成果そのものではなく、そこに至るまでの思考プロセスです。実績アピールは一時的な注目を集めることはあっても、共感や信頼を積み上げることにはつながりにくい傾向があります。
フォロワーが求めているのは、正解ではなく、判断のヒントです。迷い、葛藤、意思決定の背景を共有することで、経営者ならではの価値ある発信になります。
思考を継続的に発信することで、SNSは単なる情報発信の場ではなく、信頼が積み上がる資産へと変わります。
ただし、思考発信を継続的に行い、信頼につながる形で設計していくには、投稿内容の整理だけでなく、全体の発信方針や企業活動との接続まで含めて考える必要があります。日々の業務と並行しながら、戦略設計と改善を続けていくのは、現実的には簡単ではありません。
そのため、事業拡大フェーズにあり、組織づくりや採用にも力を入れている企業を中心に、経営者の発信設計から運用の伴走までを外部と連携して進めるケースも増えています。当社では、月額10万円から導入できる経営者X支援を行い、採用・ブランディング・顧客との関係構築を見据えた発信設計をサポートしています。
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